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言いたいことはあるのに、口から出てくるのはどこかで聞いたような言葉ばかり。
本の感想を聞かれても「勉強になった」、好きなものについて尋ねられても「何となく好き」で終わってしまう。もう少し自分の感じたことを伝えたいのに、うまく言葉が見つからない。
片石貴展さんの『自分の言葉で話せるようになりましょう。』は、そんな悩みを感性や日々の選択から考える本です。
特徴的なのは言語化の話がファッションにもつながっていくこと。
この記事では本書のテーマと読みどころを紹介します。
どんな本? 感性とコミュニケーションの関係を考える
著者はアパレル企業yutoriを創業し、「ゆとりくん」としても発信する片石貴展さんです。
本書では自分の感性、服の選び方、言語化、相手が話せる関係づくりなどを扱います。言葉を発する本人のあり方まで含めて、コミュニケーションを考える自己啓発書です。
背景にあるのはAIやSNSを通じて、整った答えや気の利いた表現に触れやすくなった時代への問題意識です。
その中で自分が何を感じ、何を選び、どのような経験をしてきたのか。
それが、話す言葉にどう表れるのかを問いかけています。
要約|自分の言葉を持つために、何に目を向けるか
整った言葉の前に、自分の実感があるか
便利な表現を覚えると説明しやすくなります。
ただ、その言葉で説明できたつもりになり、自分の感覚を確かめずに終えることもあります。
本書で扱われるのは、まだうまく説明できない感覚に目を向け、それを丁寧に捉えていくことです。
例えば、何かを「よかった」と感じたとき、その理由は人によって違います。
安心できたのか、意外な発見があったのか、昔の経験を思い出したのか。
同じ感想の中にも、その人自身の経験につながる部分があります。
すぐに分かりやすい言葉へまとめる前に、何を感じたのかを確かめる。
そこが、本書を読む際に注目したい点です。
他人の評価に加えて、自分の好みを確かめる
SNSには人気の商品やおすすめの選択肢が次々に流れてきます。それらは便利な判断材料ですが、選んだ理由を聞かれると「評判がよかったから」しか出てこない場合もあります。
本書は、そうした外からの評価に意識が向きやすい生活の中で、自分が心地よいと感じるものや、理由は説明できなくても惹かれるものへ目を向けます。
ここで考えたいのは、他人のおすすめを参考にした後に、自分でも確かめているかということです。
実際に触れてみてどうだったか。自分の生活には合っていたか。どこが好きで、どこは気になったか。
そうした確かめ方が、自分の言葉で説明するための材料になります。
言葉には、話す人の経験や選択が表れる
本書では、誰が言葉を発するかという点も重視されています。
同じ「おすすめです」でも、何に惹かれ、どのように使っているのかが伝わると、聞き手が受け取れる情報は増えます。
例えば、本を紹介するときも評判だけでなく、「どんな疑問を持って読んだか」「どこで立ち止まったか」が分かると、その人ならではの紹介になります。
本書のテーマはこうした言葉と本人のつながりを、日々の選択から考えることにあります。
なぜ、言語化の本でファッションを扱うのか?
本書の特徴は服を選び、着るという身近な行為を、感性や自己表現に結びつけていることです。
服には色や形、着心地だけでなく、背景にある文化や作り手の考え方もあります。どこに惹かれて選ぶのかによって、その人の好みが表れます。
「何が人気か」は調べれば分かっても、「なぜ自分はこれを着たいのか」は自分で確かめる必要があります。
その意味で服選びは、曖昧な好みと向き合う具体的な場面として読めます。
ただし、服を変えれば必ず話し上手になる、と受け取る必要はありません。ファッションを入口に、自分の選択と表現の関係を考えるところにこの本の面白さがあります。
具体的な選び方や着こなしの提案は、本書で確かめてみてください。
書評|言語化を学びたかった私が、ファッションの話に納得した理由
読み始めたとき私はファッションに特にこだわりがありませんでした。そのため、自分にとって重要なのは後半の言語化の部分だろうと思っていました。
ところが実際に読むと、ファッションを軸に話を進める理由に納得しました。
特に印象に残ったのは、自分の中にある、まだ言葉になっていない気持ちに執着するという考え方です。
私はこの点に、まったくその通りだと感じました。
何となく好きだと感じても、その理由をうまく説明できない。そんな気持ちを曖昧なまま流さず、何に惹かれているのかを考え続ける。服を選ぶことも、自分の感覚に向き合う機会になるのだと受け止めました。
最初はファッションの話と、自分が学びたい言語化の話を分けて考えていました。しかし読み進めるうちに、言葉にする前の気持ちを確かめることが、自分の言葉を持つためにつながっていると感じました。
また、センスよく着こなすためのフローチャートが用意されている点も親切です。考え方を説明するだけでなく、実際に服を選ぶときの手がかりまで示されています。
ファッションに強い関心がなかった私にも、その話を通じて言語化について考える意味が伝わってきた。そこが、本書を読んでよかったと感じた点です。
言語化ノートの本とは、どう違う?
このブログでは荒木俊哉さんの『こうやって頭のなかを言語化する。』も紹介しています。
私自身、この本をきっかけに3分ノートを数か月続け、感情の理由を以前より深く考えられるようになってきたと感じています。
ノートでは出来事を振り返り、「なぜそう感じたのか」を問いながら考えを整理しています。一方、今回の本は服選びなどの日常の選択も含めて、自分の感性と言葉の関係を考える内容です。
言語化に向き合う入口の違いとして読むと、それぞれの特徴がつかみやすくなります。
書く練習の実際については、『こうやって頭のなかを言語化する。』の要約と実践レビューにまとめています。
どんな人に向いている?
本書は次のような悩みや関心がある人にとって、読む候補になります。
- 自分の感想が、いつも似たような言葉で終わってしまう
- 評判だけでなく、自分の好みを確かめて選びたい
- 好きなものの魅力を、自分の経験と結びつけて話したい
- ファッションとコミュニケーションの関係に興味がある
一方、結論から話す構成や業務報告の型を中心に学びたい場合は、本書の関心とは少し距離があります。
今の悩みに合う本を探したい方は、思考整理・言語化・心の反応をテーマにした3冊の比較記事も参考にしてください。
まとめ|何を感じ、何を選んでいるかを振り返る一冊
『自分の言葉で話せるようになりましょう。』は、感性や日々の選択を通じて自分の言葉を持つことを考える本です。
ファッションを言語化につなげる切り口に特徴があり、好きなものや心地よさをどう捉えているか、振り返るきっかけになります。
整った説明はできても、自分の実感がうまく伝わっていない気がする。
そんな方は目次や試し読みで、この本の視点が自分に合いそうか確かめてみてください。


