【書評・要約】山口周『人生の経営戦略』 「打率より打席数」が腑に落ちた一冊

書評・要約

山口周さんが出演しているYouTube動画を見て、気になって手に取ったのが『人生の経営戦略』です。

本書は経営戦略の考え方を、仕事選びや時間の使い方、学習などに応用する一冊です。
特に心に残ったのは、創造性理論の「打率より打席数」と、内発的動機づけの考え方でした。

この記事では本書の要点と、自分なりに納得できたこと、活かし方が難しいと感じたことを紹介します。

『人生の経営戦略』はどんな本?

本書では人生を一つの長期的なプロジェクトとして捉え、20の戦略コンセプトから、その進め方を考えていきます。

扱うテーマは、目標設定、長期計画、職業選択、選択と意思決定、学習と成長。働き方や日々の時間の使い方を見直すための視点が詰まっています。

土台は「自分にとって大切なもの」に時間を使うこと

本書の出発点は限りある時間をどこに配分し、どのような人生をつくるかという問いです。

そこで登場するのが、知識や能力などの「人的資本」、信用や人とのつながりなどの「社会資本」、お金や資産などの「金融資本」という考え方です。

学ぶ時間は知識や能力につながり、人と関わる時間は関係や信用につながる。
時間の使い方が、人生を支えるさまざまな資本に結びついていきます。

経済的な安定とともに、自分の力を発揮できている感覚や、家族・友人とのつながりも、人生の充実には大切です。

だからこそ時間を配分する前に、自分は何を大切にしたいのかを考える。本書の理論も、この問いを土台にすると、自分の生活と結びつけやすくなります。

最も心に残った「打率より打席数」

仮説を立てて早く動く理由に納得できた

これまで読んだ本でも時間をかけて調べ続けるより、仮説を立てて素早く動くことが大切だと書かれていました。本書の創造性理論では、その理由が納得感のある形で説明されていました。

多くのアウトプットを生み出すことが、優れた成果に出会う機会を増やす。一つひとつの成功率だけを気にしていると、試す機会そのものが少なくなってしまう、という視点です。

試す回数を増やすこと自体に、成果へ近づく意味がある。

そう捉えると、仮説を立てて早めに動くという助言が自分の中で具体的な意味を持ちました。

試した結果を、次の行動につなげる

この考え方と合わせて役立つのが「適応戦略」です。
仮説を立てて動き、結果を見ながら計画を修正し、得られた情報を次の判断に取り込んでいきます。

私には「打席数」が試す機会を増やす視点であり、「適応戦略」が試した後の動き方を考える視点としてつながりました。

例えば、仕事のアイデアを具体的な形にして、相手の反応を確かめる。その反応から案を練り直すこともできるはずです。
小さく試せる場面を見つけると、日々の仕事にも取り入れやすそうです。

仕事選びでは「楽しんで取り組めるか」を大切にする

もう一つ強く残ったのが、「内発的動機づけ」です。

これは、興味や好奇心、もっと上手になりたいという気持ちなど、自分の内側から生まれる動機を指します。本書では、才能やセンスに加えて、長く取り組み続けられることの重要性が語られています。

楽しんで取り組めることには、自然と関心が向き、知りたいことや試したいことも増えていく。
その積み重ねが、知識や経験につながるという考え方です。

この部分を読んで思い出したのが、以前読んだ片石貴展さんの『自分の言葉で話せるようになりましょう。』でした。楽しんで取り組める仕事を選ぶという視点が、自分の中で両書に共通して感じられ、強く残りました。

関連記事:【書評・要約】『自分の言葉で話せるようになりましょう。』 言語化とセンスをつなぐ一冊

自分は何に楽しさを感じ、どんなことなら工夫を続けられるのか。

待遇や条件とともに、その問いを仕事選びの中に置いておくことが、長く力を発揮するためにも大切なのだと受け止めました。

ほかにも、仕事や人生を考えるヒントがある

本書には、この二つ以外にも役立つ視点があります。

考え方 自分の人生に引きつける視点
リソース・ベースド・ビュー 長く続けてきたことに、他人が簡単にはまねできない特徴を探す
ブルー・オーシャン戦略 自分の経験や関心を組み合わせ、独自の価値を考える
オプション・バリュー 修正・撤退・転身できるよう、複数の選択肢を持つ

強みを考えるときや、仕事の方向性に迷うとき。
それぞれの悩みに応じて、考える手がかりを探せるところも本書の魅力です。

難しく感じたのは「正味現在価値」の活かし方

自分の人生への当てはめ方が難しいと感じたのが「正味現在価値」です。

本書では将来にわたって生み出される価値に着目して、時間を配分する視点として紹介されています。目の前の利益に加え、その先にどのような効果が続いていくのかを見る、という方向性は理解できました。

ただ、自分の生活で何にどれだけ時間を使えばよいのか、具体的なイメージは湧きませんでした。

例えば、二つの学びたいことがあった場合、将来得られる価値をどう見積もり、優先順位をつければよいのか。自分の判断に使うには、もう少し考える必要がありそうです。

すぐに行動と結びつけられる考え方もあれば、理解を深めながら使い方を探したいものもある。私にとって、正味現在価値は後者でした。

20代の人にも読んでほしい

本書はこれから仕事や人生の選択を重ねていく20代の人にも、読んでほしいと感じました。

どんな仕事なら楽しんで続けられるのか。何に時間を使うのか。失敗を恐れて動けないとき、どう考えればよいのか。

こうした問いに向き合う視点を早い段階で知っておくと、進路や働き方を考える手がかりになると思います。

本書は人生の段階を春夏秋冬で捉えていますが、それはあくまで目安です。
経験を重ねてから、仕事や時間の使い方を見直したい人にも、得るものがあります。

特に、次のような人には合いそうです。

  • 考える時間が長くなり、行動に移すきっかけがほしい人
  • 自分に合う仕事や、働く場所を考えたい人
  • 長い目で時間の使い方を見直したい人

私にとって最も大きかったのは、「打率より打席数」から、早く動くことの意味に納得できたことです。今の自分に必要な視点を選び、身近な場面で試してみたいと思える一冊でした。

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