仕事の振り返りが「次は気をつけよう」で終わってしまう。経験は増えているのに、何が身についたのかはっきりしない。
そんなときに考えたいのが、経験を学びへ変える方法です。
松尾睦さんの『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』は、経験を学びへ変える方法を解説した本です。
私にとって大きな気づきは、成長には能力の向上だけでなく、仕事への考え方の変化も含まれることでした。
また、振り返りで得た教訓を次の仕事で試すことや、他者から意見を得ることの大切さも感じました。
本書にはマネジャーの実例に加え、自分の学ぶ力を確かめるチェックリストもあります。この記事では、日々の振り返りにどう役立ちそうかという視点から、要点と率直な感想を紹介します。
『「経験学習」入門』はどんな本?
本書は仕事の経験から学ぶために必要な姿勢と、その育て方を扱っています。理論を説明したうえで、著者の調査で得られたマネジャーのエピソードを紹介する構成です。抽象的な考え方を、実際の仕事の中でどう捉えるか考えられる点が特徴です。
自分の学ぶ力を点検するチェックリストや、学ぶ力を高めるツールと活用方法も紹介されています。理論を知ることに加え、自分の仕事への向き合い方を確かめるためにも読める本です。
後半では、部下や後輩の学ぶ力を育てるOJTも扱われます。個人の振り返りだけでなく、同僚との意見交換や職場の勉強会にも活用する読み方が示されています。
要約|経験を学びに変えるための三つのポイント
1.挑戦・振り返り・やりがいをつなげる
本書では、経験から学ぶ力を三つの要素で整理しています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ストレッチ | 少し難しい仕事や、高い目標に挑むこと |
| リフレクション | 仕事の最中や終了後に、行動や考え方を振り返ること |
| エンジョイメント | 仕事の意味や面白さを見つけ、やりがいを感じること |
挑戦から学び、達成感や仕事の意義を次の挑戦に生かす。三つが循環する点が特徴です。
その原動力になるのが、仕事で大切にする価値観である「思い」と、異なる見方や支援を得られる他者との「つながり」です。
2.経験から教訓を引き出し、次の場面で試す
本書で紹介される経験学習のサイクルは、次の流れです。
- 具体的な仕事を経験する
- その経験を振り返る
- 次にも使える教訓を取り出す
- 別の場面で、その教訓を試す
経験の質を高めるには、少し背伸びが必要な目標を持ち、結果についてフィードバックを得て、教訓を試す機会を持つことが大切だとされています。
例えば打ち合わせを振り返って「準備不足だった」と考えるだけでは、次の行動が曖昧です。不足していた情報を整理し、次回は確認の順番を変える。そうした具体的な行動まで考える必要があります。
3.能力と、仕事に対する考え方の両面で成長する
本書では知識やスキルが高まることを「能力的成長」、仕事への価値観が変化することを「精神的成長」として扱っています。
自分の力を高めたいという思いに、顧客や同僚の役に立ちたいという思いが結びつく。そのような変化も成長に含まれます。
慣れた知識や方法を問い直すアンラーニングも扱われます。過去の成功パターンが、今の状況にも合うかを見直すことが求められます。
書評|振り返りから次の実践までを意識したいと思った
成長をできる仕事が増えることだけで捉えていた
私はこれまで成長と聞くと、知識が増えることや、できる仕事が増えることを中心に考えていました。
精神的成長という視点は新鮮でした。
仕事がうまくできたかとともに、誰にどんな価値を届けたいと思うようになったか。こうした変化にも目を向けたいと思います。
他者の意見を得て、次に試す機会が足りなかった
私自身、内省して改善に取り組んでいる自覚は多少ありました。ただ、目標の難しさ、フィードバック、教訓を試す機会の三点は、十分に意識できていませんでした。振り返りがうまく進まないときに、何を見直せばよいかが具体的になったと感じます。
特に自分の仕事について、意識的に感想や改善点を聞く機会は多くありません。まずは仕事の一区切りで、説明がわかりにくかった点や、次回変えるとよい点を一つ聞くところから始めたいと思います。
意見を鵜呑みにせず、自分の状況に合う教訓を考えることが大切です。失敗の原因とともに、成功した理由も整理したいと感じました。
仕事の面白さや「つながり」は、まだ具体化できていない
一方で、仕事に集中し、面白さの兆候を見つけるというエンジョイメントの考え方は、取り入れるのが難しそうに感じました。
余裕のない場面でどう面白さを見つけるかは、まだ具体化できていません。まずは工夫できたことや、できるようになったことを振り返りで拾いたいと思います。
「つながり」の章も、管理職など、上の立場の人向けの話として受け取った部分がありました。関係性が学びを支えることは理解できても、今の仕事への結びつけ方は、十分に腹落ちしていません。
目標・フィードバック・次の実践という具体的な観点を得られた点は、今の私に読む価値があった部分です。
『「経験学習」入門』はこんな人に向いている
私の読後感では、次のような人に向いている本だと思います。
- 振り返りが反省で終わり、次に何を変えるか決められない人
- 慣れた仕事が続き、成長するために何を見直すか考えたい人
- 部下や後輩に経験を積ませた後、どう学びを促すか知りたい人
OJTでは、目標を引き上げ、相談や進捗確認で内省を促し、良かった点を伝えて自信につなげる指導が紹介されます。今すぐ使う立場ではありませんが、誰かを教えるときに読み返したい内容でした。
すぐに使える一つの手順だけを求める場合は、内容が広く感じられるかもしれません。自分の課題を整理し、実例やチェックリストと照らし合わせながら読みたい人に合いそうです。
まとめ|日々の振り返りを、次の行動につなげるための一冊
『「経験学習」入門』は、成長の捉え方と、日々の振り返りを見直すきっかけになった本でした。
私はまず、他者の意見を一つ聞き、得た教訓を次に試す場面を決めるところから取り組みたいと思います。
経験学習の考え方を自分の仕事に当てはめて理解したい人は、本書のマネジャーの実例やチェックリストが参考になりそうです。振り返りが反省で止まっていると感じるときに、次の行動を考えるために読みたい一冊です。

